HOW TO 講座

手作り化粧水の保湿成分 糖類編

市販の化粧水は、グリセリンやBGなどの多価アルコール、ベタインやピロリンドンカルボン酸のようなアミノ酸、乳酸やリンゴ酸などの有機酸、ラフィノースやフルクトース、トレハロースなどの糖類とヒアルロン酸などの高分子を組み合わせて作られています。

ここで有機酸と糖類の保湿力についてのデータがありますので紹介します。
皮膚に塗ったときにどれだけ保湿効果があるかというもので塗ってから30分後に測定しています。
数字が大きいほど、保湿効果は高いです。
コンダクタンス上昇率 塗布30分後

  • 乳酸(0.3%) 127
  • リンゴ酸(0.3%)149
  • クエン酸(0.3%) 35
  • 酒石酸(0.3%) 51
  • ブドウ糖(1%) 10
  • 果糖(1%) 261
  • マンノース(1%) 5
  • ガラクトース(1%) 13
  • アラビノース(1%)264
  • ショ糖(1%) -7
  • FJ 66,10,2005

となり、糖類では果糖とアラビノースが保湿力が高くなっています。
果糖は安ければ1kg300円程度で果実酒用に販売されています。
アラビノースは食用でダイエット素材になりますし、果糖は果実酒を作れますので、化粧水への配合を検討されてもよいですね。

また、化粧品の原料で異性化糖というのがあります。
砂糖(ショ糖)を酵素で分解して、果糖とブドウ糖に分解したものです。
人間も消化するときに砂糖を果糖とブドウ糖に分解します。
(アラビノースはこの分解酵素を阻止することで砂糖の吸収を抑えます)

ブドウ糖や果糖は、肌が作る天然保湿因子でもあり、それ自体も保湿力がありますが、肌のケラチンと結合することで保湿能をあげる面白い成分です。

身近な異性化糖というと、ハチミツがあります。
ハチミツは、蜂が花から集めた砂糖(ショ糖)を蜂の酵素で果糖とブドウ糖に分解したものです。
他にはグルコン酸などの有機酸が含まれています。

ハチミツの7割近くは果糖とブドウ糖で、1割はオリゴ糖残りは水と微量成分となります。

ハチミツは含まれる鉄の量によって色が変わります。
鉄が少ないと淡い色ですが、多いものは真っ黒になります。

これは集める花の種類によって、ミネラル含量が違うからです。
鉄が多いと生薬の有効成分とくっついて沈殿を起こすので、色の濃いハチミツは化粧水に配合できません。

ハチミツの鉄はグルコン酸とくっついて存在しています。
グルコン酸は、ブドウ糖が酸化して出来るものですが、水中の金属とくっついて水に安定に溶かし込む性質があるため、洗剤によく配合されています。

ハチミツの精製はグルコン酸とくっついた鉄を抜くので結構大変なものがあります。

ちなみに鉄を抜くためにグルコン酸を抜くと、化粧品原料としては良いのですが、食べる蜂蜜としては、あまり良くありません。

と言いますのも、ハチミツの美味しさというのは、甘さとグルコン酸の度な酸味のバランスがあるからです。

果物と同じで、単に甘いだけでは、味が緩慢となり、適度な酸味があるからこそ、奥行きのある上品な甘みとなります。

ただ、ハチミツには食中毒菌がいるので、乳幼児は食べていけないとされています。そのため、石鹸には菌が繁殖しないので配合できても化粧水には配合しない方がよいでしょう。
化粧水には果糖を配合した方が菌には安心して使うことが出来ます。

他に糖類で面白いのはトレハロースです。
ブドウ糖が二つくっついた糖ですが、乾燥状態での保湿効果に優れている糖です。化粧水に入れると感触を良くしたり、加齢臭を抑える効果を発揮します。
石鹸に入れると油臭さを低減させる効果を持っています。

近年澱粉から酵素で安価に作れるようになったので、配合を検討されてもよいと思います。
とくに手作り石鹸をされている方には油脂臭を軽減できる唯一の糖となりますので、面白いかと思います。

いずれの糖類も0.5%~1%で効果を発揮します。
たくさんいれても保湿効果は高くならず、べたつきが多くなるだけです。