HOW TO 講座

美肌水と化粧水の安定化成分について

市販の化粧品には、有用成分の安定配合を行うための成分が配合されています。
その大きなものとしては、pH調整剤、pH緩衝剤ともいわれるクエン酸が代表的なものです。

クエン酸はpHを一定に保つことで、成分の分解を防ぎます。
クエン酸のほかに、リンゴ酸やコハク酸、乳酸、メタリン酸、リン酸などの○○酸が同じような働きをします。

なお、配合量は通常の化粧水では0.1%以下となります。

化粧品の有用成分は加水分解といって、多かれ少なかれ水と反応して分解する性質を持っています。

加水分解されると性質を失うのはエステル系の合成界面活性剤が代表例で、あっけなく界面活性能は失われてしまいます。

逆に加水分解することで、性能を発揮するのは、ビタミンC誘導体やビタミンA誘導体などで、加水分解することで、ビタミンとなり効果を発揮します。

他にも植物の有効成分には、糖とくっつくことで低毒化しているものが加水分解することで、毒性が強くなるなどあります。

さて、この加水分解ですが、配合する有効成分によって、起こるpHが違ってきます。

通常はpH7の中性で安定なものが多いのですが、弱酸性の方が安定であったり、弱アルカリ性の方が安定したりと成分によって基本的に変わってきます。

つまり、成分を安定に保つためには一定のpHを保つことがまず必要となります。

そこで活用されるのが、上記のpH緩衝剤というもので、成分が一部分解しても一定のpHを保つようにすることで、有効成分を極力分解させないように働きかけます。

化粧品の開発では、この加水分解がどのpHで起こるか、どのpH範囲で安定かどうか見極めるため、pHを0.2刻みで(5.0、5.2、5.4、5.6・・・)調整して、長期安定性を確認します。

また、有効成分自体は安定であっても、微量にできた分解物が安定であるかどうかも確認します。

やり方は簡単で、50℃→0℃→50℃の温度サイクルや50℃一定で1ヶ月様子を見るわけです。

化合物によっては、クエン酸ではだめで、リン酸なら安定だったりその逆のケースもあります。

ちなみに医薬部外品という薬用化粧品は、40℃で6ヶ月間。有効成分が安定であるというデータを厚生労働省に出して、認められないと製造することはできません。

この40℃で6ヶ月という条件は常温で3年安定というデータに匹敵すると考えられています。

さて、ここで温度をかけることで、長期安定性のシュミレーションができると書きましたが、これを逆手にとれば、温度を低く一定に保つことができたなら、簡単に有効成分を安定化できることにほかなりません。

冷蔵庫保存半年~1年が、常温で1ヶ月程度の保存に相当すると思われます。

さて、ここで美肌水の安定化試験を行ってみました。
一般的な美肌水と違って、尿素1%、グリセリン5%残り水道水です。

尿素は分解すればアンモニアと炭酸ガスに分解して、pHが上昇していきます。
つまり、尿素が分解したかどうかはpHを測定すればすぐわかります。

冷蔵庫保存2℃、室温25℃、50℃で1ヶ月半と2ヶ月後のpHを測定してみました。

一番最初のpHは7.0で、冷蔵庫保存では2ヶ月後も7.0のままで尿素の分解はありませんでした。

しかし、室温だと、1ヶ月半で8.7、2ヵ月後には9.0と急激に分解しています。
50℃だと、1ヶ月半で9.0、2ヶ月後には9.0なので、予想通り完全に分解しています。

ちなみに、上の配合にクエン酸を0.01%配合したものでは一番最初のpHは4.0で、冷蔵庫保存では2ヶ月後も4.0のままで、尿素の分解はありませんでした。

室温だと1ヵ月半で5.5、そして2ヵ月後には6.4に上昇して、クエン酸を加えることで、分解のスピードはやや遅くなっています。

50℃保存の場合は、1ヶ月半、2ヵ月後ともに9.0となり、いずれもクエン酸の配合効果はありませんでした。

ただ、尿素のような分解しやすい成分でも冷蔵庫保存ではかなり分解スピードが遅くなることから、手作り化粧水の保存は、冷蔵庫保存が適していると言えるのではないでしょうか。