HOW TO 講座

石鹸の製造法とバイオディーゼル

石鹸の工業的な製造法には、脂肪酸中和法、直接ケン化法、メチルエステルケン化法があります。一般的には油脂を直接ケン化するより、脂肪酸を中和する方が、より白く、より匂いの少ない
石鹸となります。

一昔前は、油脂をタンカーで日本まで運んできて、ケン化して製造するのが一般的でした。
90年代に入り、動物愛護問題が持ち上がり、大手化粧品メーカーは軒並み牛脂からパーム油へ転換を行いました。(石鹸は牛脂7割、ヤシ油3割を混ぜて作ります)

日本のとある大手化粧品会社もつい十数年前までは意外にも油脂をケン化して、石鹸を作っていました。
ただ、製造を担当するのは、子会社で牛脂からパーム油に転換するときにその牛脂から石鹸を作る子会社は不要ということで、会社ごと処分してしまいました。

石鹸の品質は特に油脂の新鮮さによって左右されます。
そのため、現在では日本ではなく、インドネシアなどの東南アジアに大規模な石鹸製造工場を
設立して、石鹸を作るのが一般的です。
日本には石鹸をチップにして運んで、香料や保湿剤、エキスなどを混ぜて、練るだけというのが、一般的となってきました。

さて、同じケン化法でもメチルエステルケン化法というのがあります。
これは何かというと油脂とメタノールを反応させて、脂肪酸メチルエステルをつくり、この脂肪酸メチルエステルと苛性ソーダを反応させて石鹸とメタノールを作るという製法です。

なんで、わざわざメチルエステルを作るのか?

実は石鹸を作るケン化反応というのは、アルコールが存在すると早く進む性質があります。

脂肪酸メチルエステルは、メタノールと油脂、そして少量の苛性ソーダを60℃くらいで混ぜると
簡単に出来上がります。

また、石鹸を使うのに軟水機というものがあります。これに水を通すとミネラルが取れて石鹸を使っても石鹸カスが出ない軟水になりますが、この軟水機にメタノールと油脂を同時に通すと
面白いことに脂肪酸メチルエステルとなって、出てきます。

この脂肪酸メチルエステルは廃油から作るバイオディーゼルそのもので、軽油に混ぜて使うと石油の量を減らせるというものです。

石鹸作りにもこの脂肪酸メチルエステルを使うと、反応の途中で精製するメタノールが油脂のケン化反応を促進させて、短時間で、また高くない温度で石鹸を作るメリットがでてきます。

通常、石鹸を作るには、脂肪酸を中和したり、油脂をケン化したりするには、高温が必要なのですが、その高温を維持するには、重油(石油)を燃やして、熱い水蒸気を発生させ、この水蒸気の熱で製造釜を温めて、石鹸を作っています。

反応温度が低く早く進むということは、この重油の量を節約する効果も大きいのです。

まあ、油脂をケン化するのに3日かけたり、1週間かけて熟成したりすると聞くとなんとなく丁寧に作っているんだなと印象を持ってしまいますが、メチルエステルケン化法という視点からみると、そういうのは、単に売るためのコピーにすぎず、現実的には限られた石油資源の無駄遣いにすぎません。

いずれ、石油の価格が上がっていくと、石鹸の製法にも見直され、製造に時間をかける=丁寧とはみんながみんな思わない時代がくると考えています。