HOW TO 講座

透明石鹸と粉石けんについて

手作り石鹸のブームはだいぶ落ち着いてきたようですが、
手作り石鹸の本やサイトは色々あってどれも個性的で、
その中で、石鹸を使いやすくするために軟水器の提案を行っている本をご紹介します。

径書房から出版されているSoft Water Book 軟水のお風呂で赤ちゃんの肌に」という本です。

こちらは石鹸の弱点である金属石鹸対策について詳しく書かれていて、結構勉強にもなる本です。
石鹸だけでなく水の知識を増やしたいという方にもお勧めです。

さて、身の回りにある石鹸ですが、その品質は人間の体に使う場合には薬事法、
洗濯や皿洗に使う石鹸は家庭用品品質表示法によって詳細な規格が定められています。
石鹸と一口に言ってもその用途により、違う法律で規制を受けるのは、
いわゆる縦割り行政のため、化粧品は厚生労働省、洗剤は経済産業省の管轄と
なりますので、各省庁が独自に自分たちのルールを定めてそれに従わそうとするためです。

ちなみに石鹸の重さは化粧石鹸、洗濯石鹸いずれも経済産業省の
計量法によって規制をうけて、石鹸を包む紙や容器は、容器リサイクル法に準じていなければなりません。

つまり石鹸を雑貨として売る場合は、厚生労働省は知らん顔をしますが、
経済産業省の役人は目をギラリと光らせるという具合です。
薬事法は知っていても家庭用品品質表示法は知らない人が多いので、
まずはご参考まで。

ところで、石鹸を手作りされている方なら、実感されることが多いですが、
その溶け易さ、泡立ちなどは原料油脂によって左右されます。

市販の固形石鹸は、パーム油80%でやし油20%前後の割合が多いです。
以前はパーム油の代わりに牛脂を使用していましたが、動物原料を嫌う
流れが高まり、15年前からパーム油に切り替え始められました。
パーム油は精製度が悪いと独特な匂いがあり、それが日本人には不快なため、
なかなか切り替えが進まなかったのですが、いまでは牛脂を使った石鹸は
よほど小さなメーカーでないかぎりありません。

ちなみに固形石鹸の場合は、原料油脂の他に結晶型というのも重要になります。
結晶というのは、いくつかの石鹸の分子が集まって作る小さな集合体の状態で
この集合体がさらにたくさん集まって、石鹸の塊となっています。

この石鹸の分子の集まり方で、色々な結晶型があるのですが、
通常手作り石鹸や枠練石鹸などはオメガ型となり、
市販の白色石鹸はベータ型で、ベータ型の方がオメガ型より
あわ立ちがよく水に溶けやすいという特徴を持っています。
つまり、同じ油脂から作っても結晶の形により、あわ立ちや水への溶けやすさはかなり変わります。

ところで、手作りの白色石鹸でもケン化したあとにさらにアルコールや
グリセリン、砂糖を加えて、再度熟成させると透明石鹸となります。

この透明石鹸は出来た繊維状結晶がナノ粒子並みに微細なため、
石鹸にあたった光の反射が少なく透明に見えるわけです。

ナノ化粧品について、以前メルマガで書きましたが、人間の目で見える
可視光線の波長より粒子が小さいと、粒子に当たって跳ね返る光の反射が
少なくなるため白から青白く透明のように見えます。(レイリーの法則)
これはファンデーションの粒子にしても、乳液でも石鹸でも同じことで、
その粒子にあたった光がいっぱい反射すると白っぽくなったり、
逆に少ないと透明感が出たりします。
この粒子に当たった光の反射量が粒子の大きさによって変わるのが
レイリーの法則です。(粒子が大きいほど反射する光が多い)

#人間の目は物にあたって跳ね返る可視光線の波長を感じとって
780nmなら赤や380nmなら青などの色を感じます。
白色は物質が可視光線を吸収せずに全波長が跳ね返ると白色に見えます。
これを理解すれば冴えのある純白石鹸を作るには、
可視光線を跳ね返す適度な大きさの粒子を石鹸に配合すれば
よいことがわかると思います。(たとえば酸化チタンなど)

さて、泡立ちや水への溶解性を左右する結晶の形ですが、
洗濯に石鹸を使う場合はかなり重要な問題となります。

最近は全自動洗濯機が普及して、その中でも節水型になると、
たいていの粉石けんはとけ残りができてしまい、粉石けんを使わないように
勧める洗濯機メーカーが増えています。
もちろん、節水型でも節水モードを変更して使えば、
粉石けんはなんとか溶けますが、それでは何のための節水型洗濯機かわからなくなってきます。

たいていの粉石けんは、石鹸をスプレードライして、一旦微細な粉末状にしたあと、
その粉末を圧縮して中空粒子などにして、粉石鹸とするのですが、
この製造方法では石鹸の結晶型がオメガ型となり、水に溶けにくい石鹸となります。

そのため節水型洗濯機の自動投入装置で使うと溶け残りが発生したり、
溶けても洗濯の最後の段階であまり役に立っていなかったりします。

なお、スーパーなどで簡単に手に入る無添加の粉石けんはオメガ型のため、
全自動洗濯機では使いにくいというのが、常識となっていますが、
中には造粒工程を工夫して溶けやすい結晶の形にした
節水型洗濯機対応の粉石けんもあります。
素肌にやさしいせっけん 洗濯用純せっけんというものですが、
こちらは有名な純石鹸メーカーの粉石けんに比べて、
石鹸そのものを研究して作っただけに
同じ純石鹸でも超ミクロ単位では全然違うものに仕上がっています。

ただ、残念なことにスーパーの棚に商品を置くにはCM条項などがあって
(週に何回か商品のテレビCMを流さないと棚には並べてやらないというもの)、
CMを流せる純石鹸メーカーの商品しか置かないところもあり、
本当によい石鹸というのは簡単には買うことができません。

本当は節水型洗濯機の自動投入装置を使って問題なく使えるのに、
粉石けんはいちいち工夫して使わないといけないという間違った常識が
まかり通っているが残念なところです。

でも、洗濯のときに何もユーザーが工夫せずに合成洗剤と同じように
使えるかどうかで、石鹸メーカーがちゃんと石鹸を研究して
商品開発をしているかどうかがわかりますので、粉石鹸の使いやすさで
石鹸メーカーの持つ熱意や技術力を推し量ることができます。