HOW TO 講座

分子の大きさとエタノールの使用上の注意(メルマガより)

数年前からイオン導入用の化粧水を売る化粧品メーカーの中に、「パラベンは分子量が大きいので、イオン導入できない」「防腐剤は分子が大きいので、肌には入らない」「ヒアルロン酸はイオン導入できる」こんなことを主張するメーカーさんがおられるようです。
私はこういうのは自分は化学や皮膚の知識がないと言っているようなものだと思っています。

一般の人ならしょうがないかもしれませんが、手作り化粧水を作られる方には、はやいうちにこれはおかしいことなんだとわかるようになっていただきたいですね。

分子の大きさとは?

パラベンやフェノキシエタノール、化粧品の有効成分の分子の大きさを 簡単に判断するには、分子量を知っている必要があります。まず、分子は水素や炭素、酸素といった原子がくっついて出来ていますが、分子量とは、そのくっついているものをすべて足した重さとなります。

化粧品の有効成分は炭素と水素、酸素などで構成されることが多いので、この分子量が大きいほど、分子の大きさも大きいと考えることができます。(厳密には化学構造式をみる必要がありますが)

それでいわゆるパラベンですが、化粧品にはメチルパラベンが 主に配合されていて分子量は152(炭素8個水素3個酸素3個)フェノキシエタノール138(炭素8個水素9個酸素2個)リン酸型ビタミンC誘導体イオン253(炭素6個水素4個酸素9個リン1個)生薬化粧水の美白成分でもあるカテキン290(炭素15個水素14個酸素6個)ユキノシタの有効成分のテアフラビン565(炭素29個水素24個酸素12個)保湿成分であるヒアルロン酸は100万、コラーゲンは30万と防腐剤より分子量が大きく、分子の大きさもそれに比例して大きくなっていきます。

皮膚に浸透できるのは分子量が600以下と言われていますので とてもじゃないですが、ヒアルロン酸やコラーゲンが浸透しないことは分子量をみれば一目瞭然でしょう。(こんな大きなものが肌に入るようでは、ウィルスや細菌にやられます)

また、パラベンはまれにアレルギーを起こすということなので 医薬部外品の表示指定成分でもあります。アレルギーを起こすには、皮膚内に浸透して生きた細胞に影響を及ぼす必要があり、 表示指定成分になっているということは、皮膚に入っていくということが あると十分考えられるでしょう。

手作り石鹸を作られている方は、各オイルにあった苛性ソーダで石鹸を作られていることでしょう。オイルによって苛性ソーダの量が違うのは、各オイルの分子量が違うためです。そのため、オイルの分子の数と苛性ソーダの分子の数を合わせるために 100gのオイルに対する苛性ソーダの量を変化させます。(分子量が小さいオイルほど100gのオイルに含まれる分子の数が多くなるのでその分苛性ソーダが多くなります)エタノールの取扱いにご注意下さい。

生薬の抽出剤にエタノールを使用されておられる方は多いかと思いますが、エタノールは火を近づけると引火するおそれがありますので、必ず火気のない所で取扱い、保管する必要があります。

火を近づけた時に、そのものが何度のときに火がつくかという温度を 引火点といいますが、無水エタノールの場合は12℃、50%エタノールで25℃程度となります。

つまり、無水エタノールの場合は、12℃以上の室温があれば引火しますので、コンロなど火のそばで取扱わないなどの注意が必要です。(たとえばてんぷら油は室温でも火を近づけても燃えることはありませんが、てんぷらをしているときに鍋を加熱しすぎると引火点に達するので、火がつきやすくなります)

アルコールが引火して燃え出し時は、石油が黒々と燃えるのと違って、火がついているのかどうかわからないほど、薄い色の炎となります。その火が周りに移って周囲が燃え始めてから、初めて火がついたと気づきますので、火気厳禁ということを改めて認識して下さい。(化粧品で一番燃えやすいのはLPGを使っているスプレー缶です)ちなみに、BGの引火点は115℃ありますので、通常の環境では 燃えることはありません。

また、キャンプなどで木を燃やそうとしても簡単に燃えなくて苦労することも ありますが、これは木の引火点がだいたい260℃付近なので、火を近づけても木の表面が引火点に達してないと燃えません。逆にガソリンなどは零度以下でも火がつきます。

映画で水面に広がった油に引火して燃え上がるシーンなどがありますが、通常の火災などは水をかけることでその物質の表面温度を下げて、つまり引火点が下がるので、燃えなくなり火災が沈静化していきますが、石油などは引火点が零度以下なので、水をかけても火がついた石油が周囲に飛び散って余計火災を周囲に広がせるはめになります。

その場合は消火剤で火の上に泡の層をつくって、空気(酸素)を遮断して、消火する必要があります。学校の火災訓練で、消火器を使われた方もおられるかもしれませんが、消火器というのは、重曹と洗剤が混ざった水溶液と、硫酸アルミ(重曹を分解して炭酸ガスにする)が入っていて、レバーを引くことでこの2種類が混ざって、重曹が急激に分解し、出てきた炭酸ガスの泡で火を消します。

今の季節ですと、重曹とクエン酸を混ぜた手作り入浴剤を愛用されている方もおられるかと思いますが、その重曹とクエン酸が水に溶けた時、お互いが混ざりあって反応して大量の炭酸ガスが発生するというのは、ちょうど消火器と同じ原理となっています。