HOW TO 講座

ケミカルピーリング(メルマガより)

ケミカルピーリング系の商品は原価が安いのに、商品価格は高いというぶったくり商品が多いです。

今回はケミカルピーリングについて考えてみましょう。

家庭用のケミカルピーリング化粧品が4年ほど前から普及しだしました。10~20%グリコール酸配合のものもあり、中には医師が行うケミカルピーリング剤より高濃度であることを売り文句にしているものもあります。

ケミカルピーリングとは酸で皮膚を溶かし新たな皮膚を再生させることです。主にニキビの肌質改善に使われます。
エステでも美顔術として集客の目玉となっていますがトラブルが多く、国民生活センターでも注意を呼びかけています。

強い作用を持つ薬品で皮膚を溶かすのですから、副作用も大きく刺激に弱い肌質だと 予想に反して、肌に水泡ができたり腫れあがりひどい状態となります。
さて、こういう状況でも家庭用ピーリング剤というのは、やはりその効果に期待する方が 多いのかそこそこのマーケットの規模があります。

ただ、化粧品会社の姿勢は様々で鐘紡及び外資系はフルーツ酸を、資生堂はアミノ酸での 角質ケアを提案する一方、花王やアルビオンはピーリングそのものに対して批判的です。
また、中堅以下の化粧品会社はグリコール酸や乳酸などのフルーツ酸を高濃度に配合した ものを目玉にしていて、エステサロンなどでも医者が使うピーリング剤より 濃度が濃いことを売り文句にしています。

ここで1つ考えないといけないのは、医師でも失敗することがあって、エステサロンでも大きなトラブルが多いケミカルピーリングを、何の知識を持たない一般の人が家庭用のピーリング剤を使って果たして何のトラブル無くできるかということです。

いくら効果があっても刺激に弱い方の皮膚がただれたりしたら、それはとても化粧品と呼べるものではなく、社会通念上好ましくないでしょう。

一般に販売されているケミカルピーリング化粧品は必ず濃度を売り物にします。

濃度が高いと効果があり、また高価であってもそれだけお徳のような感じにさせます。
しかしながら、ケミカルピーリングの本質は濃度も大切なのですが、それ以上に重要なのが pHです。
pHをコントロールすることで、家庭でも医師が使うケミカルピーリング剤より 濃度が濃くても安全に使えるという「からくり」があります。

pHがなぜ重要かというと、グリコール酸や乳酸がケミカルピーリング剤として働くのはイオン化していない酸タイプであって、pHが高い場合はイオン化して酸が中和され、この場合はピーリング効果はなく、保湿剤として作用を及ぼします。たとえばpH1のグリコール酸1%はpH3.5のグリコール酸2%濃度に相当します。

つまり、市販のケミカルピーリング化粧品のグリコール酸濃度が6%あっても、 そのpHが3.5くらいなら本当に有効に働くグリコール酸というのは3%以下となります。 また、このpHが3.5を超えると急速にピーリング効果が落ちていき、pH5以上ではほとんどピーリング剤としての働きは失われてしまいます。

このからくりに気づいていただきたいのですが、高濃度のグリコール酸を配合することを 売り文句にして、ほとんどの方に安全に使っていただくとなると、単純にpHを 高くしてやればいいだけなのです。

そうすることで、誰が使っても安全なピーリング剤 が作ることができ、pHを高くすることで医者が使うよりフルーツ酸濃度が高いということを アピールする化粧品ができあがるわけです。
ちなみに皮膚科でつかうケミカルピーリング剤はpHが1以下のこともありますし、マイルドなものでもpH2以下でしょう。これに対してエステサロンで使うものは低いものでもpH2.5で、だいたいpH3ぐらいが標準です。

市販の化粧品はpH3~7くらいです。植物エキスが入っているとエキスの成分がpHが低いと分解するので、pH3以上となることが多いです。

どうしてこれだけの差があるかというと、それはケミカルピーリングをする人の皮膚に対する知識の差がそのまま使う薬剤の強さとなって現われているだけで、皮膚に対する知識が十分にある医師の場合は、pHが低くて、濃度も被験者の年齢と同じくらいの濃度(たとえば30才のひとなら30%濃度)のグリコール酸や乳酸を使ってピーリングを行います。

pHが低いと、刺激が強いばかりではなく、皮膚への浸透性が強いため水で洗顔しても 残った薬剤がぐんぐん皮膚へ浸透して、予想もしない破壊を引起こすということがあります。また、広告どおり本当に角層が剥がれやすいと毎日使った人の皮膚がどんどん薄くなり、その結果バリア能力がほとんどなくなって、水さえ顔につくと酷くしみて、なにか顔に塗るとすぐにかぶれ、とてもお肌の有効なお手入れとは言えません。

そして、事故が起こって化粧品会社がPL裁判で訴えられたら、被害者の方は簡単に裁判に勝てるので、pHが低くて浸透性があり効果が高い(つまり副作用も大きい)ピーリング化粧品を売り出すということはありえないのです。

ちなみに、ケミカルピーリングを家庭でやるというのは、民間療法で昔からありました。
暖めたお酢に足を20分程度毎日つけて、水虫を治すというものです。お酢の殺菌作用で水虫を治すというもので、水虫自体の完治は難しいのですが、ただ、かかとなどの分厚い皮もひと皮剥けて綺麗な素足にできます。
(皮が剥けはじめると汚いので、その間は靴下をはく必要があります)

子供のころ、母親の足が1ヶ月ほどで皮がむけて綺麗になったのをみて驚いていましたが、これこそがまさにお酢で硬くなった皮膚を溶かして新しくするケミカルピーリングです。

なお、米酢はpH2.5~3くらいの酢酸5%で足にはなんとか使えるかもしれませんが、顔には刺激が強すぎて塗ることは出来ません。万一顔についたらすぐに洗い流す必要があるものです。

AHA:フルーツ酸のことで、グリコール酸、乳酸をさします。なお、グリコール酸は無理ですが乳酸は薬局で買えます。(50ml 500円)
乳酸原液はかなりきついのでお子様の手の届かないところに保存してください。
また、目に入ったりしたらすぐに洗い流してください。

● 基本的なこと

1. ピーリングはニキビ肌の改善効果もあるがしみができやすい肌質にする。
ピーリングをすることで角質層を剥がすと、刺激に弱くなってしまいます。そのため日光に当たると、皮膚が刺激を受けやすくなり、 その結果、しみができやすくなります。これを防ぐには必ず日焼け止めを併用する必要があります。

2. ニキビ肌の改善やかかとの厚くなった角質をとるのには効果的かもしれませんが、敏感肌や乾燥肌の方がつかうと メリットよりデメリットが大きいかもしれません。

上の文でpH3.5だと たとえば5%AHA配合だと、 その半分が中和され効果がなくなっていると書きました。
それじゃ、乳酸を2.5%配合だけなら中和しなくてもよいのではないかと 考えられる方もおられるかもしれません。

基本的にpHというのは、AHAの皮膚浸透性に大きく関ってきます。 pH調整をしていないAHAというのは、非常に浸透性がよくて 真皮まで5分、10分という短時間で到達してしまいます。

化粧品会社の広告ではAHAでコラーゲン合成促進と書いてあるので、真皮でコラーゲンの合成が促進されてしわが改善できて良いと思われる かもしれません。残念ながら、無情にもそう簡単にうまくことが運ぶという ことはなくて、大抵は皮膚炎を起こして、ものすごい肌荒れを引き起こします。

また、真皮に到達したあと、AHAは毛細血管の壁を破る事もあるので、血が噴出してくることもあります。

さらに洗い流した、中和したつもりでも、 浸透性の良さから洗い流せない深さまで到達している場合は、そのまま突き進んで真皮までいくので、専門家でもストップウォッチを使いながら、秒単位でピーリングを制御する必要があります。

表皮のターンオーバーは1ヶ月ですが、真皮が壊れると再生に最低1,2年かかります。 これは真皮の一部が崩壊してできるニキビ跡がなかなか治らないことから よくわかると思います。未中和の乳酸というのは、素人が扱うにはとても怖いもので、綺麗になるどころか四谷怪談に出てくる「お岩さん」に 変貌させる力を持っています。

そのため、pH3.5以下のAHAを扱うにはアメリカでは資格がいりますし、 日本でも皮膚構造学を専門的に勉強した皮膚科医でないと取扱いは難しいものです。 つまり不測の事態が起こった時にすぐに対処できるかが皮膚科医と一般市民との違いです。

しかしながら、薬局で売られている乳酸の価格からピーリング化粧品の原価が 計算できるので、原価数十円程度のものが数千円~1万円で売られている現状をみると、よい商売をしておられるとうらやましくなります(笑)

さて、自作のピーリング剤でお顔をピーリングすることはお勧めしませんが、やられる場合は以下の注意を守って使ってください。 ただ、乳酸の使い方、ちゃんとピーリング剤を毎回同じ品質ものを作れるという ことを確認するため、最低半年はお顔には使わずかかとなどをピーリングして それからちゃんとできるということに自信ができたら作ってください。

なお、お顔をピーリングしてメリットのある方は、ニキビ肌の方です。 しみでお悩みの方がターンオーバーを早くしてメラニン排出を早めて美白などという ことは考えないで下さい。ピーリング剤は、角層の防御力を落すので、 しみが排出されるどころか、かえってしみの部分が過敏となり余計しみが濃くなるという ことになる可能性もあります。

なお、かかとに使う場合はお風呂上りのあとに使ってください。 また、かかとの場合は洗い流す必要はありません。
お顔の場合は5分程度つけたあと、水で1分くらいすすいでください。
長く顔につけれるとその分ピーリング効果もでますが、思わぬ副作用がでるので、 長くても5分で刺激を感じたらすぐに洗い流すというのが基本となります。

必ずpH試験紙でpHを確認してから使ってください。 #pH試験紙は東急ハンズで購入されるか、MOON2PEACEさんで取扱っています。(pH2.8~4.2まで0.2単位で細かくpH測定が可能のものです) 東急ハンズで購入されるときも、必ずpH3.5を測定できてその前後も 細かく測定できるものをお買い求めください。

重曹は少しずつ入れてかき混ぜて、泡が消えるのをまってから また少し入れないと炭酸ガスの泡が急激に噴出してくるので危ないです。 ちなみにこの炭酸ガスの泡が噴出してくる原理は、入浴剤に使われていて、 炭酸ガスで血行促進という類のものは、クエン酸と重曹の組み合わせで、水に溶かすとクエン酸が重曹を分解することで、炭酸ガスの泡を発生させます。

作成上の注意点

■自作のピーリング化粧品を作るときは、濃度とpHに注意すること

pHは必ず3.5以上ないといけません。また、乳酸の濃度も5%が限界だと考えてください。pH3.5というのは、 ある程度安全にピーリング化粧品を使うための目安となっています。これはアメリカの香粧品原料専門委員会がある程度安全に使えるピーリング化粧品はpH3.5以上あればよいとしているからです。そのため、よほどのことがないかぎり、pH3.5より低い化粧品を販売する会社はありません。

【作成法】

乳酸5gを水95gに溶かして重曹を2g少しずつ加えます。冷蔵庫保存で2週間以内に使いきります。
なお、粘度がないので、目の付近につけると、垂れて目の中に入りますので気をつけてください。(目や唇はよわいのついたらすぐに洗い流す)
乳酸 5gを水95gに溶かして、重曹を加える時、 重曹0.5gでpH2.7、重曹1gでpH3.2、重曹1.5gでpH3.4、重曹2gでpH3.7となります。 ただし、家庭用のデジタルばかりでも誤差は0.5gあるため、 ピーリング化粧水を作るときは必ずpH試験紙でpHを確認しないといけません。 たとえかかとに塗る場合でも確認したほうがよいでしょう。

ちなみに自作のピーリング剤はなんの補償もありません。 ピーリング化粧品が高いのは、それだけ被害にあう人が多く保険代の分、価格が高くなっているとも言えるでしょう。 また、市販のピーリング化粧品が安全かというとそういうわけでもなくて たとえば洗い流すことを前提とした商品は危険な部類のものだと お考え下さい。
(安全なら洗い流す必要はございません) ただ、危なそうなピーリング化粧品もかかとの皮膚が厚くなる方にはちょうどよいお手入れアイテムだと考えています。

アメリカのケミカルピーリング化粧品には日焼け警告の表示が義務づけられて 「化粧品の使用中と使用後一週間は日焼けしやすくなるので、日光に当る時間を少なくするとか、日焼け止めを必ずつける」という表示を しなければなりません。

肌の強いアメリカ人でさえ、気をつけなければならないものなので、 当然、日本人の場合はピーリング系のものを使うのは、真夏や顔そりした後は避けるのが ベターだと考えます。
(日光にあたる部位に使う場合)
#ピーリング成分が直接日焼けを促進するのではなくて、ピーリングによって薄くなった角質層が紫外線の害を受けやすくなり、日焼けが促進されます。

市販商品でこの日焼け警告が無い場合は、実際にはピーリング力があるほど成分が配合されてなかったり、メーカーが勉強不足かのどちらかだと判断できます。

また、手作りピーリング剤より市販のケミカルピーリング化粧品が安全かというと そういうわけでもなくて、あくまでも配合されているAHAの濃度とpHによって 決まるものだとお考え下さい。

さて、AHA配合商品にピーリング石鹸があります。
要は5%程度のグリコール酸や乳酸を配合した石鹸です。
ここで考えていただきたいのは、石鹸に5%もグリコール酸や乳酸を配合したら石鹸自体のpHが下がり、泡立たない石鹸というか油の塊となります。石鹸が泡立つにはpH9以上でアルカリである必要がありますが、単純にAHAを配合してもpHが中性となり泡が立たず石鹸として使えません。つまり、AHAを配合するには中和したものを石鹸に配合することとなります。

上の文でピーリング効果を発揮するには化粧品が弱酸性である必要性を書きましたが、
市販のAHA配合石鹸はどんなものでも泡立ちます。
このことからpHが中性以上であり、AHAによるピーリング効果よりむしろ石鹸としての機能を優先させていることがわかります。

【AHA配合石鹸の作り方】

AHAを配合するのは、ケン化が終了した石鹸生地に配合します。

■用意するもの

石鹸・ 無水エタノール・ 乳酸
重曹(スーパーの製菓コーナーにあります)
グリセリン・ 砂糖

重曹を4gデジタルスケールで量って、これを200ml程度の計量カップ等に入れます。
つぎに水道水を30ml(大さじ2杯)をこのカップに入れます。
そして、乳酸をスポイト(トゥヴェールのヒアルロン酸についているものやコーナンで売っています)で一滴ずつスプーンでコップの中をかき混ぜながらぽとぽとたらしていきます。
#このとき、一気に乳酸を入れると炭酸ガスが爆発的に発生してカップの外へ溢れます。

カップの中が無色透明となり、かき混ぜても泡が立たなくなった時点で垂らすのをやめます。
そしてこのカップの中へ無水エタノールを70g、グリセリン5g、砂糖5gを加えて溶かします。

エタノールを加えているので、火をつかうと引火するため、必ず火の気の無い湯煎でこのカップを暖めて、そこへ細かく砕いた石鹸を80g加えて溶かします。溶かし終えた後、小さじ一杯の無水エタノールを加えて、ゆっくりかきまぜて泡をできるだけ消し、その後、型に流し込みます。1日おいた後、湯煎に型をつけて、石鹸を少し溶かして型から出した後、その後日陰で1ヶ月ほど熟成させて終了です。これで5%AHA配合透明石鹸のできあがりです。